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※任意団体SPREAD当時に公開されたコラムです。

牧野総合法律事務所 牧野 二郎氏

先日、ある紛争があり、裁判まで発展してしまった事件の中で、手帳が問題となりました。業務記録を見れば、事実関係がはっきりするので、証拠として採用しようということになったのですが、なんと、会社は一切管理していないということで、その所在がわかりません。

 よく聞いてみると、手帳は会社が支給しているのだけれど、その手帳は、個人のものという認識が一般的で、プライベートな取り扱いになっているというわけです。こうした会社が実に多いとはわかっていましたが、だからといって、業務記録までがなくなってしまうというのでは問題がありすぎでしょう。

これまで、情報漏洩が問題となり、ノートPCの紛失事件が話題になりました。その関連で、携帯電話の電話帳情報の取り扱いも問題となっていました。
ところが、手帳については、これまで議論されたことがほとんど無い、というのが実際でしょう。

ただ、会社の取り扱う事案で紛争が起きた際に、有力な証拠として手帳は使われてきました。これまでは、人材の流動化は少なく、業務の担当者があまり変わらなかったので、裁判で手帳が必要になった際も、比較的高い確率で、手帳が提供されてきたのです。

しかし、現在、人材の流動化が進み、定着率が下がり、早期退職制度があるなど、事業担当者が変わってしまうことが多くなりました。こうした状況の中でも、まだ、手帳は個人のものという認識でいますので、人材の移動の際に、重要な証拠が持ち出され、会社がそれを利用できなくなるのです。
 

無論、個人のプライバシーの問題は重要です。手帳には、どうしてもそうしたプライベートなことも書き込まれるでしょう。そのプライバシーまで会社において行けというのは酷なことです。

 
ではどうするか?公私混同を避けるというのが、一つのアイデアでしょうか。業務手帳と私的手帳をわけることかもしれません。業務の手帳は、業務に関する事実経過やスケジュール、様々なメモが記載されます。これは事業を推進するために必要なものでしょう。従って、トラブルが起きたら提供できるよう、業務情報だけ書き込むようにするわけです。
 
携帯電話での、公私の使い分けが可能な時代になってきました。次は、手帳の使い分けが必要な時代になるのだと思うのですが。