Pocket

※任意団体SPREAD当時に公開されたコラムです。

総務省 情報流通行政局 情報セキュリティ対策室 中谷 純之(なかたに じゅんじ) 氏

►登場人物紹介
ヤストモ:1990年代からタイムスリップしてきた法律系(30代)
コウジ:デジタルネイティブでちょっとやんちゃなバンドマン(20代)
ジュンジ:棒読みファンタジスタ(30代)

【街中において】

ヤストモ:おいおい、街中でも電車の中でも、みんな、なんか小さなパソコンをいじっているけど、一体あれは何だ?!
コウジ:あれは、スマートフォンっていう代物だ。スマホやスマフォンなどと呼ばれている。従来の携帯電話が進化だか退化だかしたもので、いずれにしても、電話ができるパソコンだと思ってもらえればいいゾ。
ジュンジ:そうだね。情報セキュリティを考える上では、スマートフォンは、携帯電話の延長というよりも、パソコンに近いと認識してもらった方がいいんだ。

ヤストモ:それにしても、スマホとやらをいじりながら歩いていたら、危ないよねぇ。
コウジ:あれは、「スマ歩」って言われる行動だ。オレたちが歩きながらビートを刻むように、あの人たちは、歩きながらスマホをいじっているわけだ。
ジュンジ:スマホを落として液晶画面が破損したり、鉄道のプラットフォームから線路に落下してけがをしたりするだけならまだしも、周りにいる人にぶつかって、善良な市民に迷惑をかけることになるにもつながるから、「ながらスマホ」はやめてほしいよね。

vol1_1-thumb-200x150-275

ヤストモ:ビートと言えば、現代社会には、SPREADというイカしたバンドがあるって、未来新聞で読んだよ。
コウジ:バンドではないが、、、いや待てよ、熱い思いを持って人に何かを伝えるという意味では、同じかもしれないな。オレみたいなデジタル社会の寵児であれば問題ないが、パソコンやスマホが苦手な人もいる。そういう人たちの力になる、すげぇ団体なんだ。
ジュンジ:今や、インターネット技術を基盤とした機器やサービスがどんどん出てきていて、ユビキタスネットワーク社会が実現しつつある。こういう社会変革の良い面を、みんなで享受することを目指して、情報セキュリティに関する地域密着型の活動をしている団体なんだ。
ヤストモ:それなら、SPREADの方々に、「スマ歩」にピリオドを打って欲しいなぁ。
コウジ:そんな勝手なことを言ったら、SPREAD事務局の方に怒られるかもしれないけど、重要なことだよな。オレはオレで、「スマ歩」をしている人を見ると、「バルス」と唱えている。。
ヤストモ:SPREADみたいなイカした団体が、こういう問題に関するマナーも教えてくれるといいなぁ。

【電車内において】

ヤストモ:ねぇねぇ、シルバーシートで、そのスマホとやらを堂々といじっている人がいるけど、一体どういうつもりなんだ?!車内で通話したり、着信音を鳴らしたりするのは論外として、そもそも電源を切っておくべきではないの??
コウジ:別に、音を鳴らさなければ、誰にも迷惑かかんないから、いいんじゃないのか??

vol1_2-thumb-200x149-278

ジュンジ:その考えは、友人としていかがなものかと思うね。心臓ペースメーカを装着している方や、体調がすぐれない方への配慮、すなわち、そういった方が安心して電車に乗れることを目的として、設定されているルールは尊重しなければならないと思うんだ。だから、ペースメーカへの影響はないと主張し、そのことをもって携帯電話の電源を付けたままにして良い、ということにはならないはずだ。
ヤストモ:非常に由々しき問題だと思うんだけど、法で規制して取締りをするのは難しそうだしなぁ。その一方で、社会的規範が守られずに完全に形骸化してしまっている。どうにかして、シルバーシートとかで携帯電話を使えないように、技術的に対処できないものかねぇ?
ジュンジ:携帯電話の抑止装置というのがあって、電波法上の実験局免許をきちんと取得の上で使用すれば、「圏外」の状態にすることができるんだ。劇場やレストランで利用されているんだ。
コウジ:でも、最近じゃ、地下鉄の駅間でもケータイがどんどん繋がるようになっているゾ。なんか、逆行していやしないか?
ヤストモ:へぇ。20年前は、地下鉄のホームですら、つながらなかった。でもそもそも、駅間でなんでケータイが使えるようにする必要があるんだろう?
ジュンジ:車内、さらに駅間でも、ケータイを使いたい人が居るのも事実なんだ。そういう意見にも耳を傾ける必要があるし、サービス提供者側としては、競争上、利便性を追求せざるを得ない。なかなか難しい問題だね。
ヤストモ:ルールとして決まっていることは守るのが、我が国国民の良いところだと思うよ。もし、ルールがおかしいと思うのであれば、ルールを変えればいい。そもそも、わざわざシルバーシートに座って、スマホをいじる必要があるものかねぇ。
コウジ:わかった、わかった。オレが悪かったよ。たしかに、そのとおりかもな。ちなみに、現在では、シルバーシートじゃなくて優先席や優先座席って呼ぶんだゾ。ところで、機内モードって意味あるの?電話がかかってこなければ、電波は出ないんじゃないのか?
ジュンジ:通話やデータ通信をしていなくても、基地局との接続を確保又は確立するために、端末は電波を出しているんだ。ちなみに、細かな話をすれば、さっき説明した抑止装置を使えば、端末側から携帯電話用周波数の電波が発射されることを防ぐこともできるんだ。これは、包括免許の付与にあたっての条件になっている機能によるものだ。
コウジ:へぇ。でも、そういう問題ではなくて、たとえ機内モードに設定しても、優先席では使わないのが、マナーってもんなんだな。
ヤストモ:そういうことだね。誤解をおそれずに言えば、安全のためではなく、安心のためのルールがマナーというものなのかもしれないね。実際に危険かどうかも、もちろん重要な判断基準ではあるけど、安全であるという共通理解がない現状において、ルールがあるのであればそれを守るのが市民の責務ではないだろうか。本当の意味でもリテラシーって、自分が使いこなせるだけではなくて、社会の中で受け入れられる使い方ができることを言うんじゃないだろうか。

こぼれ話:車内における携帯電話の使用に関するルール

 我が国の電車等の公共交通機関の多くには、高齢者や身体障碍者、妊婦、けが人等座席を必要としている者の着席が優先される「優先席」と呼ばれる座席が設定されている。古くは、「シルバーシート」と呼ばれていた。心臓ペースメーカを装着した人等への配慮のため、優先席付近では、携帯電話の電源を切ることになっている。
 すべての座席が優先席である横浜市営地下鉄や、逆に優先席がない鉄道については、マニアックな世界になってくるため、ここから先は、ご関心のある方ご自身による調査に委ねることにする。キーワードは、「携帯電話電源オフ車両」。

 また、優先席以外においても、我が国の電車等の公共交通機関の多くは、車内マナー向上のため、「マナーモードに切り替えるなど、周りのお客様のご迷惑とならないようにご協力をお願いいたします」、「車内では携帯電話の通話はご遠慮ください」などとアナウンスしている。後者のアナウンスについては、東海道新幹線を運行するJR東海が、利用者のマナー向上を認め、平成15年10月に、客席での通話を明示的に禁止することをやめた(当然、アナウンスもされていない!このことは、あまり知られていない事実。)。にもかからず、新幹線の車内で通話は、デッキで行われることが多い。同社は、北風と太陽の話を地で行っているわけである。ただし、他社に追随の動きは見られないということは、いくらアナウンスをしても、多くの路線では、マナーが向上していない又は悪化しているということであろう。

 なお、私が個人的に喧しいことを言っているわけではないということの傍証として、日経新聞社の調べにおいても、心がけたいことの第1位が、優先席周辺で電源を切ることであった。同調べでは、他にも、スマ歩をしない、電車・バスやレストランでは操作せず鞄やポケットに入れておく、家族と一緒の時はしまうといった、痛快な事項がランキングされている。また、ビジネスにおいては、会議や商談中も出しっ放し、いつも手に持って話すなどのことが否定的に捉えられている。
 おって、3月24日の東京新聞24面には、“メトロ全線に「携帯」電波、マナー違反につながりやすく?優先席で使用、車内通話…増える恐れ、周囲気遣う乗車文化を”と題する記事が掲載された。多くのメディアが、地下鉄の駅間でケータイが繋がること手放しで歓迎する中、注目に値する記事である。

参考図書:
 「スマートフォン情報セキュリティ最前線~業界の最新動向と今後の方向性~」(中谷純之、ITUジャーナル、2013年3月号)
 (URL: https://www.ituaj.jp/?itujournal=2013_03

参考記事:
 「その行為は大丈夫?携帯・スマホ心がけたいこと」
(日本経済新聞、3月10日NIKKEIプラス1 1面)
 (URL:http://www.nikkei.com/article/DGXZZO52559860Y3A300C1000000/

(総務省 情報流通行政局 情報セキュリティ対策室 中谷 純之 氏)
※このコラムは2013年3月末時点の所属にて執筆いただいたものです。