私は長らく東京でセキュリティ対策ソフトを開発・販売する会社で働いておりましたが、2019年末に退職したあと故郷・徳島に戻り、現在は小中学生やシニアを対象とした情報セキュリティの啓発活動を行っています。最近は特にシニアの方のスマホ・インターネットの講座やサポートを行う機会が多く、いくつかエピソードをご紹介させていただきます。
 「シニアあるある」の一つ目はパスワード忘れです。まず講座の最初にすべてのサービスのパスワードを確認するのですが、ほぼ覚えていません。販売店でもらったパスワードを書いた紙を持って来てもらい、そこからマンツーマンで確認を行います。参加者が10人くらいだとほぼこれで1日が終わります。
 パスワードの次はセキュリティ設定です。ウイルス対策ソフトのインストールやFacebook、LINEの設定見直しなど、楽しく安全に使うためのセキュリティ対策の大切さを伝えています。先日はFacebookの二段階認証設定に挑戦してもらい、時間はかかりましたが見事全員設定できました。地方では中々こういうことを教えてくれるところがなく、パソコン教室は使い方ばかり、販売店はサービスの説明をするばかりだそうです。
 「ログイン」という概念の理解もやっかいです。ある方がFacebookのアカウントを3つ持っていました。理由を尋ねると「PC用、タブレット用、スマホ用」で作ったとのこと。サービスは一つで様々な機器から「ログイン」して使うものという概念を理解していただくのに苦労しました。ただその方は以後も3つのアカウントを機器毎に使い分けているらしく、本人がそれで満足しているなら良しとしました。シニアの場合、原理原則の理解が難しい場合、押し付けるのではなく寄り添ってあげることも大事です。
 また、ある方からは「スマホに替えたらメールがいっぱい来るようになった」と相談を受けました。画面を見ると届いているのはメールではなくLINEやSMS、アプリからの通知などでした。シニアにとってはこれらは全部「メール」と認識されるようです。
 「指が乾燥してタッチパネルが反応しない」「指が震えて押したいボタンが押せない」などシニア特有?の悩みもあり、講座の進み具合は遅々としています。こう書くと「やはりシニアのサポートは大変だな」と思われるかもしれませんが、日々新鮮な驚きと発見があり、楽しみながらやっています。自分が使っていないOSや機器について聞かれると咄嗟に回答できないこともあり、改めて調べることで自分の勉強にもなります。シニアに対するサポートで大事なのは「愛」と「辛抱」。この言葉を胸にこれからも地方で「置き去りにしない」サポートをがんばって行きたいと思います。

執筆者プロフィール

籔内 祥司 様
公益財団法人 e-とくしま推進財団 シニアアドバイザー

株式会社ジャストシステムでコンシューマ事業の責任者を務め、株式会社カスペルスキーではCSRを立ち上げ日本各地で情報モラル・セキュリティの啓発活動や教材制作を行った。2020年より徳島県をベースに、主に小中学生やシニアを対象に出前授業や講座を実施。最近ではオンライン授業も開始し、(公財)e-とくしま推進財団のシニアアドバイザーとして徳島県下の小中学校のICT活用の促進や、シニアのICT活用の向上を目指している。

2021/1/27

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